就農と農地取得と転用許可について

1.はじめに

農地を 「買う」「借りる」「農業以外のことのために使用する」

以上の行為はすべて農業委員会の許可(場合によっては届出)が必要です。

どうしてそうなっているかを一言でいうと「農地を守るという国の政策」です。

そのため農地を取得するために資格や許可が必要であったり、国や行政の助成や融資を受けるために、農業者が一定の構成要件(農地所有適格人や認定農業者など)を備えていないと申請できなかったりなど、仕組みが複雑であることが多いのが農業です。

しかし、農業を守るという国の政策上、事業資金の助成や経営安定交付金の制度や税制面での優遇措置が豊富なため、

新規参入者もどんどん増えています。

弊所では農業経営アドバイザーの資格を持つ司法書士が在籍しております。

また行政の窓口とも連携しておりますのでスムーズに必要な機関をご案内し、ワンストップで就農や農業法人の設立や農地の取得や農地転用に関する許認可申請手続き、産業の6次産業化支援などのご案内をすることが可能です。


2.「農業者でない者の農地取得に関する規制」


農家出身でなくても、農業に意欲がある人であるならば、農地も買うことも借りることもできます。
農業に参入、つまり「就農」するためには、まず農地を取得しますが、下記の5つの要件を満たす必要があります。

  1. 農地のすべてを効率的に利用すること
  2. 必要な農作業に常時従事すること
  3. 一定の面積を経営すること
  4. 周辺の農地利用に支障がないこと
  5. 法人の場合は農地所有適格法人の要件を満たしていること

要件をすべて満たした上で農業委員会に申請し許可が出て、初めて売買に基づく所有権の移転の効力が生じます。

 

3.「農業のために農地を賃貸する場合の規制」

貸借であれば、農地所有適格法人でない一般法人でも農地を賃貸し、農業をすることが可能です。
ただし、下記の条件を満たす必要があります。

  1. 貸借契約に解除条件があること
  2. 地域における適切な役割分担のもとに、農業を行うこと
  3. 業務執行役員または重要な使用人1人以上が、常時農業に従事すること(農業は、農作業に限らないマーケティング、経営企画などの事務に関するものでも問題はない。)

要件をすべて満たした上で農業委員会に申請し許可が出て、初めて賃貸借契約の効力が生じます。

4.「農業以外の目的のために農地を利用する場合」

保有する農地を農地以外に使用する場合も許可や届出が必要です。

転用許可といいます。農地ついて、一時的に別の目的で使う場合も許可(一時転用)がいります。

以下に4つのケースを上げます。

このようなケースの場合、ぜひ弊所にご相談ください。

①農地転用型太陽光発電

農地転用型太陽光発電は農地転用を行い、つまり農地の地目を変更し、太陽光パネルを設置し発電を行います。

しかし、「農地転用」は農業を可能とする土地が日本国内から減少し、農業の衰退を招くことと、一度農地から他の用途の土地に転用されると再び田んぼや畑に戻すということは難しいため、地目を農地から農地以外の地目に変更するための許可の条件はとても厳しく、様々な手続きが必要です。

また、地目を変更できない農地、つまり原則「転用許可が下りない地域」もありますので注意が必要です。

②営農型太陽光発電

営農型太陽光発電とは「ソーラーシェアリング」というもので、畑や田んぼの上に透過性の高い太陽光パネルを設置し、農業を営みながら、同時に太陽光発電も行うことができます。宇都宮市内の街中でも、家の屋根に乗せている方が多いと思いますが、郊外にいくと広大地に「ソーラーシェアリング」をしている土地を多く見かけます。

農地でも太陽光発電を行うことができますが、以下の要件があります。
「ソーラーシェアリング」を行う場合には、

  1. 周辺の農地の営農に支障をきたさないこと
  2. 年に1回の農業委員会に報告をし、農作物生産に支障がないこと
  3. 支柱の基礎部分を一時転用の対象とし、その許可期間は3年間までとすること(一定の条件のもと期間が10年に伸長)

上記のような条件を満たせば、農地転用できない農地でも太陽光発電が可能となりました。
「ソーラーシェアリング」の方法にしても、太陽光発電の支柱を畑に建てること自体が、農地以外の目的に使用することに該当するため、柱に関しては農地転用の許可申請が必要です(4条・5条許可)。

また、農家さんの土地を借りた上、「ソーラーシェアリング」をすることも可能です。

但し、農地の賃貸を有効に成立させるためには農地法3条許可を農業委員会も出してもらう必要があります。

そして、上記で述べたように太陽光発電の支柱を畑に建てるためには、一時転用許可が必要です(5条許可)

③農地を一時的に農地以外に使用する場合

農地を一時的に農地以外に使用する場合なども農地の転用の許可や届け出が必要となります。
たとえば、園芸用の土(鹿沼土など)の採集や畑の一部を駐車場として賃貸させたり、第三者に商用の看板を立てるために賃貸させる場合などが当てはまります。また、②で述べたように「ソーラーシェアリング」で、畑に支柱を立てる場合も含まれます。

④地目変更して宅地にして売却したい場合


この場合も転用許可が必要です。地域によっては届出のみで済みます。

しかし、農地法の許可等があったとしても、現況が宅地へ変更されていなければ「宅地」へ地目変更登記ができません。
一般的に、「宅地」として地目が認定されるためには、宅地への造成工事が完了(各筆の土地が道路等で区画され、土盛、土留、側溝等の工事が完了していること(登研409・13参照))。

そして、建物の基礎工事の完了や建物につき建築確認を受けていることが求められます。

転用許可だけでは、地目変更の登記が進まない事態もあるため、注意が必要です。

5.農地である不動産を農家でない人が買って、宅地をして利用したい場合

農地を他の目的に使うには、転用許可が必要です。農地にこんな規制があるとは知らず、農家でない人が贈与契約を締結してしまうケースがあります。この場合、転用の許可がでない場合、この贈与契約は意味を成しません。

農地については、贈与もしくは売買契約の締結と農地委員会の許可などと合わせて、はじめて有効な契約となります。農地を買う場合で、農地として利用しない場合に、「許可」が必要か、「届出のみ」でよい地域かは重要な確認事項です。

転用許可が下りる見込みもない農地である場合、贈与や売買契約を解除するしかありません。

農地の売買や贈与には注意してください。

6.「6次産業化支援」

6次産業化とは、「1次産業(農林漁業)」、「2次産業(加工)」、「3次産業(流通・販売)」の融合により、農林水産物に新たな価値を加えることで、 農村漁村における所得の向上、収益性の改善、雇用の確保に結びつけ、農林漁業の発展と農村漁村の活性化に寄与するものです。

つまり、農家さんが生産だけでなく、加工・販売を独自もしくは他業種と提携して進め、2次産業や3次産業に進出し、収益を上げていきましょうという取り組みです。

弊所には、農業経営アドバイバーを保有する司法書士が在籍しております。6次産業化サポートセンター等の機関と協力し、6次産業化の取り組みを支援しておりますので、ぜひご相談ください。

6次産業化のための国の支援は多くあります。

6次産業化のための融資や専門家の無料派遣なども行っております。ぜひ活用してほしい支援です。

 

 

7.農業法人について

農事組合法人について

農事組合法人とは、農業生産の協業を図る法人です。

行うことが出来る事業は以下の事業に限定されます。
(ア)農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業。
(イ)農業の経営(その行う農業に関連する事業であって農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定めるもの)。

(ウ)(ア)及び(イ)に付帯する事業。

現在、日本では農業を営む会社の多くは株式会社を採用しています。株式会社と農事組合法人を比較しながら、その特徴を説明します。

農事組合法人の出資者は原則として農業者に限られ、人数も3人以上必要です。出資者は組合員と呼ばれ、役員もこの出資者の中から選任しなければなりません。株式会社は出資者や発起人と設立時役員が同じでなくても構いません。そして、農事組合法人が行うことが出来る事業の範囲も農業関連のものに限られるため、兼業で農業とは関係ない事業を行う場合は株式会社を採用するべきです。

農事組合法人のメリットとしては、農事組合法人が得た所得のうち畜産業を除く農業所得に対して、要件を満たせば事業税が非課税となることです。

もう一つ大きな特徴として、農事組合法人では、組合員への報酬の支払方法を、給与制にするか従事分量配当制にするか、選択することが可能です。従事分量配当制とは、組合員がその事業に従事した程度に応じて、農事組合法人がその組合員へ報酬を分配する制度ですが、家族や親族が構成員であれば問題ないですが、外部から労働力を得たい場合、この方式では納得のいかない者も出る可能性があります。
株式会社と農事組合法人どちらがいいかは事業内容や構成員や今後の見通しなどよく検討した上で決定する必要があります。外部雇用を多く採用することは考えておらず、農業以外はしないことが明らかである場合、税制上の優遇を目的として農事組合法人という選択もあるかと思いますが、収益性を考え農業関連以外の事業も行うことを視野に入れているならば、やはり株式会社のほうがいいでしょう。

法人種類 農事組合法人 株式会社
適用法令 農業協同組合法 株式会社
目的 共同利益の増進 営利
事業内容 法令に規定された農業に関する事業 制限なし(許認可は別途必要な場合あり)
出資者数 農業者等で3人以上 制限なし
定款の認証 不要 必要
出資と経営の分離 分離されていない(一致) 分離
配当方法 出資配当(制限付)、事業分量配当、従事分量配当 出資配当
労働者数の制限 組合員及び同一世帯者以外の常時従業員数が常時従事者の3分の2以下 制限なし

弊所では、農業に関する株式会社や農事組合法人の設立のサポートをしております。ぜひご相談ください。

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